建設業の許可
知っておくべき5つのポイント!建設業の許可の要件とは?
土木工事や大工工事等の建設工事業を営む会社を設立した方から、「元請けの会社から建設業の許可を取らないと取引できないと言われた。許可を取るには何をしたらいいのか?」とのご質問をいただくことがよくあります。
本記事では、そのような建設業の許可が必要となる事業者の方に向けて、許可を取るために知っておくべき5つのポイントを解説します。
建設業の許可とは何か?
そもそも、建設業を行うための許可とは何なのでしょうか。
建設業を営むために遵守する法律である建設業法には、土木工事、建築工事、大工工事等の建設工事業を営む者(個人・法人ともに)は、下記の場合分けにより、国土交通大臣又は都道府県知事の許可を受けなければならないとされております。
国土交通大臣の許可 → 2以上の都道府県に営業所を置く場合
都道府県知事の許可 → 1の都道府県内にのみ営業所を置く場合
なお、請負代金の額が500万円に満たない等、軽微な建設工事は、許可を受けずに行える場合があります。
もし、大臣又は知事の許可が必要な工事を許可なく行った場合には、「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」に処せられます(建設業法第47条)。
このように、建設業を営む場合には、法令で認められた軽微な工事を除いて、その工事に関する許可を受けておく必要があります。
では、その許可を受けるための要件とは何でしょうか。
※本記事では一般建設業の許可について記述します。
建設業の許可を受けるための5つの要件とは?
建設業の許可を受けるためには、建設業法第7条に規定する4つの「許可要件」を備えていること、そして同法第8条に規定する「欠格要件」に該当しないこと、これらの5つの要件に合致することが必要です。
これらの要件をそれぞれ、以下で解説します。
1.経営業務の管理責任者がいること
経営業務の管理責任者とは、建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者とされております(建設業法第7条第1号)。
この基準とは大きく分けて以下の2つの要件を満たすことを言います。
(1)適切な経営能力を有する者
(2)適切な社会保険に加入していること
(1)の「適切な経営能力を有する者」とは、法人の場合は常勤の役員、個人事業の場合は事業主本人や支配人等で、経営業務を総合的に管理、執行した経験が一定期間ある者のことです。
この具体的な要件は、許可を受けようとする者が法人である場合には常勤役員(株式会社の取締役、持分会社の業務執行社員等)のうちの1人が、また、個人である場合には本人又は支配人のうちの1人が、次のいずれかに該当するというものです(建設業法施行規則第>7条第1号)。
①建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者。
②建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者。
③建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者。
④常勤役員等のうち一人が、次のいずれかに該当する者であって、かつ、常勤役員等を直接に補佐する者として、当該建設業者又は建設業を営む者において「財務管理の業務経験」、「労務管理の業務経験」、「運営業務の業務経験」について、5年以上の経験を有する者をそれぞれ置く(一人が複数の経験を兼ねることが可能)ものであること。
(1)建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
(2)5年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有する者
また、(2)の適切な社会保険に加入していることについては、具体的には健康保険、厚生年金保険及び雇用保険に関し、全ての適用事業所又は適用事業について、適用事業所又は適用事業であることの届出を行った者であることを必要とされております。
なお、この経営管理業務の責任者については、他の事業者での常勤役員等が兼任することができません。
2.専任技術者が営業所ごとにいること
専任技術者とは、営業所ごとに、その営業所に常勤して専ら職務に従事する者のことを言い、許可を受けようとする建設業にかかる建設工事についての「国家資格又は実務の経験を有する」技術者のことを言います。
この専任技術者は、許可を受けようとする建設業が一般建設業であるか特定建設業であるか、また建設業の種類により、それぞれ必要な資格等が異なります。
また、営業所ごとに常勤していることが必要です。
具体的には、以下の資格等を有する専任技術者を置くことが必要です(建設業法第7条第2号、同第15条第2号)。
1.許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、高校卒業後5年以上若しくは大学卒業後3年以上の実務経験を有し、かつ、在学中に許可を受けようとする建設業に係る建設工事ごとに指定された学科(建設業法施行規則第1条で規定されている学科のことで、「指定学科」といいます。)を修了している者
2.指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上実務の経験を有する者又は専門学校卒業後3年以上実務の経験を有する者で専門士若しくは高度専門士を称する者
3.許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、10年以上実務の経験を有する者
4.国家資格者
5.複数業種に係る実務経験を有する者
3.誠実性
法人である場合においては当該法人又はその役員等若しくは政令で定める使用人が、個人である場合においてはその者又は政令で定める使用人が、請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないことが要件とされています(建設業法第7条第3号)。
請負契約に関して不正な行為とは、請負契約の締結、履行に際して詐欺、脅迫、横領等の法律に違反する行為のこと、不誠実な行為とは、工事内容、工期等について契約内容に違反する行為のことをいいます。
4.請負契約を履行するに足る財産的基礎又は金銭的信用を有していること
建設業法では、建設業の許可を必要とする工事を請け負うことができるだけの財産的基礎等を事業者が有していることを許可の要件としています。
具体的には、以下のいずれかの要件を満たしていることが必要です(一般建設業の要件)。
①直前の決算において、自己資本の額が500万円以上であること。
②金融機関の預金残高証明書等で、500万円以上の資金調達能力を証明できること。
③許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること。
5.欠格要件に該当しないこと
許可申請者やその役員、使用人等が建設業法に定める欠格事由に1つでも該当した場合は、許可がされません。
具体的な欠格事由には、破産者で復権を得ない者、一般建設業の許可又は特定建設業の許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者、禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者、許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているとき等があります(建設業法第8条)。
まとめ
以上、建設業の許可に係る5つの要件について解説しました。
建設業の許可の手続きには、上記の要件を満たすかどうかの確認や必要な書類が何か等について事前に管轄庁(国土交通省又は都道府県)との協議を行う場面が多くあります。
事業に専念するためにも、許可申請の手続きは専門家に代行を依頼するのが無難です。