死後事務委任契約
死後事務委任契約とは
死後事務委任契約とは、生前中に、ご自身が亡くなった後の手続、葬儀等の諸々の事務(死後事務)に関して第三者へ代理権を付与し手続きを委任する、ご自身が委任者、事務を引き受ける方が受任者となる、委任契約をいいます。
契約の際は、委任事項を記載した契約書に、両者が署名押印します。
本来、人が亡くなると、その相続人が、火葬・納骨や、役所の各手続き、未払金の支払い、財産の処分等を行いますが、相続人が高齢のため手続きを行うことが出来ない、故人との関係が希薄なため対応をしない、ということがあります。
また、全く相続人がいない場合には、火葬をすぐに行うことが出来ない、財産が放置される、ということが発生します。
特に、故人が不動産を所有していた場合、不動産は放置され、建物が老朽化して倒壊することで、近隣の家屋を損壊したり、通行人に怪我をさせてしまうことにも成り兼ねないのです。
近年、全国的に、相続発生後に相続登記を行っていない不動産が多く発生しており、そのような不動産は放置され、社会問題にもなっています。
ご自身の亡き後、手続きを行ってくれる方がいらっしゃらない方は、生前に、ご自身で対策をする必要があるのです。
死後事務委任契約で委任できる手続き
(例)
・葬儀手続き、火葬に関する手続き
・あらかじめ希望した方への訃報連絡
・埋葬・散骨に関する手続き
・病院、医療施設の退院、退所手続き
・公共サービス等の解約、精算手続き
・公的年金の停止手続き、保険証等返還手続き
・住居引き渡しまでの管理、退去手続き
・住居内の遺品整理立会
火葬を行うには、役所で火葬許可証をもらう必要がありますが、火葬許可証は、死亡届けを提出する際に申請することでもらえます。
但し、死亡届けを提出する方は下記の方と法律で限定されており、誰でも提出できるものではありません。
―死亡届け提出者―
①親族
②同居者
③家主,地主又は家屋管理人,土地管理人
④後見人,保佐人,補助人
⑤任意後見人、任意後見受任者
相続人がいらっしゃらない方でも、病院や施設で亡くなられた場合は病院長や施設長(家屋管理人)が、賃貸住宅で亡くなられた場合は大家さん(家主)が、借地上の建物で亡くなられた場合は地主が、それぞれ死亡届を提出することが可能です。
しかし、ご自身が所有している土地上にある持ち家で亡くなられた場合等で、任意後見契約も締結していなかった場合、死亡届を出す方がいないことになります。
そのような場合は、市区町村が対応することとなりますが、戸籍の確認等も必要となることから、火葬まで時間がかかることになります。
死亡届をスムーズに提出するためにも、事前に、住んでいる住宅の状況や、大家さん、地主さんの連絡先を確認しておく必要があるのです。
もし死亡届を提出できる方がいらっしゃらない場合、任意後見契約の締結も検討した方がいいでしょう。
訃報連絡先は、葬儀に来て欲しい方や死亡の事実を知らせてほしい方の、氏名連絡先をお伺いします。
訃報連絡先が多いと、弔問にみえる方の数も比例して多くなることが想定されますから、葬儀の規模も変わってきます。連絡先が多い場合には、葬儀費用も多く見積もる必要があるのです。
中には、相手の負担を軽くするために、葬儀が終わってから知らせてください、というお申し出も多くあります。
その他、解約しなければならないもの(例えば、購読している新聞や、利用している配食サービス等)の契約内容や連絡先も、事前に確認しておく内容のひとつです。
住宅の処分をする場合、賃貸であれば退去手続き、持ち家であれば売却等の手続きが発生しますが、その際には、室内の遺品も整理する必要があります。
遺品整理の費用は、荷物の量や住んでいる場所により異なるため、生前のうちに見積もりをとります。
死後事務委任契約を受任する場合、事務にかかる費用は事前にお預かりしているため、どのくらいの費用がかかるのか、実際に見積もりをとって把握する必要があるのです。
契約までの期間
死後事務契約を締結する場合、先述の通り、どんな事務が発生するのか、詳細を事前に洗い出す必要があるため、複数回打ち合わせを行います。
そのため、ある程度の期間(1~3か月ほど)かかることを見込んで相談いただくことをお勧め致します。
特に、納骨にかかる事務は、個々により宗教や納骨先のお寺の事情が異なるため、第三者が納骨することが可能なのかどうか、納骨及びその後の管理費の支払い等がどのように行われるのか、等も確認しておかないと、希望された霊園への納骨が出来ない、ということにも成り兼ねないのです。
葬儀の要望や納骨先の希望、財産をどのように処分したいか等、ご自身の希望が多岐にわたる場合には、余裕を持って相談ください。